外国産業財産権侵害対策等支援事業
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侵害対策の相談・アドバイス事例集

発明協会外国相談室が受けた相談事例より、知的財産権の侵害に関する最近の特徴をみると次のようになる。

  • 侵害品の流通国・地域が拡大している。
    製造国・地域は韓国、台湾から中国に拡大し、製造量では東アジアに集中している。
    広範囲な国に流通する前に、迅速なエンフォースメントで製造元を押えることが重要。
  • 侵害の発生原因は多様化しており、事前予想が難しくなっている。
    IP権利の取得がないために、侵害対策に不正競争防止法の適用を検討するケースが多い。
    IPの出願国選定と商標、特許、意匠などへ出願の幅を広げることが重要になっている。
    ビジネス連携では秘密保持とIP権利取得の抜けを避け、注意深く契約を結ぶことが大切。

侵害対策相談とアドバイスの事例の内、侵害発生の原因と対処方法が参考になると思われる事例を整理した。

  1. (1) 特許・実用新案・意匠
    1. ①<特許、間接侵害、水際措置、台湾> No.109/H13 (M)
      (相談)
      X社は、国内の印刷機メーカーに製造委託したオフセット印刷機を国内販売している。この印刷機に関する特許を日本では取得しているが、台湾にはない。
      今年になり、台湾の印刷機メーカー3社が全く同じ方式の印刷機を台湾で製造/販売し始めた。上記3社の内1社に、X社の下請メーカーが印刷機の部品を販売していることが判明した。台湾メーカーが日本へ輸出するのを防ぎたい。
      (アドバイス)
      • 台湾での対策: 台湾には特許権が存在しないので、特許に基づく権利行使はできない。また、X社はこの印刷機を台湾で販売しておらず市場において類似品と出所混同しないために、台湾の公平交易法も主張できない。
      • 日本での対策(輸入防止): 台湾メーカーが印刷機を日本へ輸出した場合には、水際措置のみならず、国内販売業者に法的手段を執れる。また、国内下請メーカーに対しては、台湾へ輸出している印刷機部品が専用品であることから、特許権侵害(間接侵害)を主張できる。
      (備考)
      台湾では、公平交易法及び営業秘密法が日本の不正競争防止法に相当する。
    2. ②<特許、判例、台湾> No.98/H13 (M)
      (相談)
      X社はMドリル(商品名)と言うPCB用ドリルを製造販売している。この商品は使い捨てドリルであるが、台湾業者がこの使用済み商品を日本ユーザーから買い取って刃先を再加工し、日本の商社を通じて日本で再販売している。この仕様書には、超硬材料はX社の表示がある。
      (アドバイス)
      日本の商社に対して、日本の特許権を侵害する旨の通知をする。(使い捨てカメラの判決と同じ理由で、再利用は特許権を侵害する。)
      台湾業者に対しては、製品仕様書からX社名を削除するよう要求をする。台湾での特許権は存在しないが、製品仕様書に無断で社名を使用されることは顧客に誤解を与え、製造物責任の問題が発生する可能性がある。
      (備考)
      H12.8.31 東京地裁 平成08(7)16782 特許権民事訴訟事件。
    3. ③<特許、並行輸入、EU> No.166/H14 (W)
      (相談)
      X社は、日本、米国、欧州各国に特許を持つ製品について、ベネルックス三国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)内における独占的販売権をオランダ企業に与えた。ところが、イタリアのライセンシーが製造する製品がイタリアからオランダに並行輸入された。オランダ企業から、独占的販売権を維持するために並行輸入を排除することを要請された。
      (アドバイス)
      契約では、オランダ企業に付与した独占販売権はX社によって製造、販売された製品を域内で独占的に販売できるものであって、他のライセンシーが製造、販売したものについては権利は及ばないはずである。 また、イタリアのライセンシーが直接ベネルックス三国に輸出しているような場合はともかく、その他の第三者が輸出している場合には、これを止める権利ないしは義務は無いのではないか。 したがって、その旨をオランダ企業に伝える。 ただし、イタリアのライセンシーについては、事前に調査する。
      (備考)
      EUは、EU域外からの並行輸入は認めていない。
    4. ④<実用新案、意匠、差止請求、日本> No.200/H14 (M)
      (相談)
      X社は「換気口用フィルター」を開発し、現に販売中である。この商品に関し、実用新案権、意匠権を取得している他に、特許出願中である。ある中堅化学メーカーが、類似品を開発して販売中であり、この類似品に関する意匠権を取得している。
      Xが申請した2件の仮処分請求は却下された。出願中の特許の登録可能性と今後の対策を相談したい。
      (アドバイス)
      2件の仮処分請求(意匠権侵害/不正競争防止法違反)を検討した結果は、商品形態は類似していない。従って、今後損害賠償請求の訴訟を予定しているとの事であったが、無駄な労力を使わないようにアドバイスした。実用新案権(無審査登録)の技術評価書を検討したが、評価は1~2で登録性がないとアドバイスした。
      特許出願に関しては特許性があると思われるので、早急に審査請求手続を行うと共に、必要ならばクレームの補正をして早期権利化を目指すようにアドバイスした。
      (備考)
      仮処分(差止め)請求:意匠法37条、不正競争防止法3条にそれぞれ規定。
    5. ⑤<意匠、判定、日本> No.23/H13 (M)
      (相談)
      X社は、商品の鋳造インゴットケースについて、平成11年に意匠権を保有した。類似品を製造販売し始めた2社に対して警告書を送付したが、何ら回答がない。その内1社の類似品販売先は、X社の主たる取引先であり、以前この取引先に対して類似品に対応する見積書と設計図を手渡した経過がある。
      (アドバイス)
      本件意匠登録に係る意匠と類似品とはかなり形態上の差異があるので、特許庁に対し判定手続きをすべきである。判定の結果次第で、両者はX社の要求に応じる可能性がある。両社に対しては製造販売のライセンスをすることも1つの解決方法である。
      (備考)
      判定手続:特許庁への申請は、意匠法25条に規定。
  2. (2) 商標
    1. ①<商標、著作権、不正競争防止法、中国> No.164/H13 (M)
      (相談)
      X社は、深セン(広東省)の取扱販売店で商標「A」を付した耐圧ホースの模倣品が発見した。模倣品は商標を変えている以外は、商品チラシ、梱包ボビン、商品本体すべてデッドコピーである。梱包ボビンには「JAPAN」と印刷している。商品チラシでは、X社の片仮名商標を使用し、日本語による「安全上の注意」もデッドコピーである。X社は、中国で当該商標を登録している。
      (アドバイス)
      中国の商標実務では、片仮名は文字としてではなく図形として判断されるので、X社の英語による登録商標と片仮名による使用商標とが類似する商標と判断されるのは困難な場合がある。中国企業が片仮名商標を登録しているかを調査する。X社は片仮名商標の登録をした後、販売店に対するアクションを検討すべきである。
      (備考)
      著作権法、不正競争防止法による対策はないか?
    2. ②<商標、刑事救済、マレーシア> No.82/H12 (K)
      (相談)
      X社のハウスマーク「A」の商標を付した4輪自動車用の偽物ブレーキパッド(重要保安部品)がマレーシアで出回っている。製造業者を特定出来たので現地の法律事務所に相談しているが、経費がかからない有効な手段を教えて欲しい。
      (アドバイス)
      マレーシアでは行政府が摸倣品取締りの強制捜査を行う権限を有しており(いわゆる行政警察に相当)、裁判所からTDO(Trade Description Order)を入手し、ここに取締りを依頼するのが安全面でリスクも少なく推奨される。但し、損害賠償の請求は出来ない。
      ブレーキパッドの摸倣製造業者は、ある特定の部品メーカーを摸倣することはまれで、多くのメーカーのものを製造・販売していることが多い。 X社と取引がある日本の自動車メーカーの不正商品対策責任者に相談する事をお勧めする。
      (備考)
      TDO:取引表示法(Trade Description Act)に基づいて発行される刑事救済。
    3. ③<商標、不正競争防止法、中国> No.12/H14 (M)
      (相談)
      X社は中国会社にスプールに金ボンディングワイヤーを巻きつけて輸出している。 中国企業がこの空いたスプールに中国製金ボンディングワイヤーを巻きつけて、日本の半導体メーカーに売り込んできた。日本の半導体メーカーから調査依頼があり、ハウスマークを刻印したスプールが無断に使用されている事実が判明した。中国、日本共に商標権はない。対応策についてアドバイスして欲しい。
      (アドバイス)
      • 中国会社へ警告状を出す。
        中国会社はドイツの著名会社との合併であり、権利意識が高いと予想されるので、警告状を出せば商標の無断使用はなくなると考える。法的根拠は、中国の反不正当競争防止法5条(3),(4)、民法不法行為及びパリ条約10条2。
      • 中国で商標登録をする。
        国際分類9類(11C01) 電子回路(集積回路)をつくるための部品(ボビンに金線を巻きつける<電子部品>)
      (備考)
      パリ条約10条の2では、混同、信用阻害、虚偽表示を禁止。
  3. (3) 著作権
    1. ①<著作権、コンピュータ・ソフトウエア、中国> No.95/H13 (M)
      (相談)
      X社は大手ゼネコンに対し、CADソフト(建築用図面)を販売している。
      日本の会社が海賊ソフトを上海で開発し、安価で販売している情報がある。X社はCADソフトに専用のプロテクターを開発し海賊ソフトが動作しないようにしたが、このプロテクターも解読されてしまった。海賊ソフトとプロテクターは既に香港で販売されているとの情報があり、日本へ輸出される可能性が十分ある。この模倣品を止める対策は?
      (アドバイス)
      CADソフトとプロテクターに関し、中国で著作権登録をしたほうがよい。中国はWTOに加盟して著作権を無方式で発効する。ただし、実際に著作権の行使する場合は、その証明が実務上困難である。香港で販売されている海賊ソフトとプロテクターを購入し、X社商品と対比してみる。日本と上海の企業を調査して早急に対策を検討する必要がある。
      (備考)
      コンピュータ・ソフトウエア保護条例:中国著作権法3条(8)の規定、2001年新施行。
    2. ②<著作権、譲渡、中国> No.209/H14 (M)
      (相談)
      X社は、プリント基板検査テスターを製造販売している。倒産した日本企業から商品に関する特許権、著作権(プログラム)を買取った。契約書も存在する。しかし、倒産企業の中国子会社の株式を中国人が100%保有しており、X社の著作権を侵害する商品を製造販売している。この中国企業に再三抗議しているが、交渉は行き詰まっている。
      (アドバイス)
      著作権譲渡契約書を検討した結果、「国内外」における著作権譲渡という文書がなく、中国における著作権の帰属に関して問題がある。日本と中国での著作権登録手続を早急に進めるよう検討すべきである。手続後に、相手方に対して法的措置をとる。著作権問題を専門とする中国律師(弁護士)を紹介することにした。
      (備考)
      ソフトウエア著作権のライセンス及び譲渡:中国著作権19~22条に規定。
    3. ③<著作権、営業秘密、日本> No.78/H14 (I)
      (相談)
      X社は、航空機用非常携帯トランシーバーのプログラムを登録済で、米国のデザイン特許を保有している。 過去に製造を委託していた企業が同一の商品を製造し、米国に輸出している。損害賠償を請求できるか。
      (アドバイス)
      プログラムの著作権を有しているのであれば、著作権法に基づく請求は可能である。ただし、先方のプログラムとの同一性の立証(主要な部分でかまわない)をする手段を検討する必要がある。相手方がX社の営業秘密を使用しているのであれば、不正競争防止法に基づく請求が可能であるが、なにが秘密なのか、秘密としての管理性などが問題となる。契約(請負契約、守秘契約)に基づく請求は、契約書類を見ないと助言はできない。
      (備考)
      不正競争防止法による営業秘密の保護には、秘密管理性、有用性、非公開性の3要件。
  4. (4) 不正競争防止法
    1. ①<不正競争防止法、技術ノウハウ、台湾> No.111/H13 (K)
      (相談)
      X社が開発した機械を台湾の取引先が欲しがっているが、以前に台湾の業者に機械(旧型製品)を売ったところ模倣品を製造販売されてしまったことがあり、同じ轍はふみたくない。今回の機械について、台湾でも日本でも特許権等は取得していない。何か対策がとれるか。
      (アドバイス)
      台湾にも、日本の不正競争防止法に相当するような法律はあるが、今回の事案では無理である。①売却先との契約で、模倣品の製造販売を防止するための条項を定めておく、②売却する機械に模倣が困難になるようなノウハウに細工をしておく(分解して解析しようとすれば機械が壊れる、ダミー部品をまぜておく等)、③売却前に、急ぎ台湾で今回の機械に関連する特許出願をする、等の対策がかんがえられるが、万全の対策はない。
      X社は近い将来に今回の機械を改良した新製品の発売を予定しているということだが、その場合は必ず台湾で特許出願しておく他、②の点を工夫した機械にしておくべきである。
      (備考)
      台湾では、摸倣については公平交易法、営業秘密は営業秘密法に規定。
    2. ②<不正競争防止法、差止請求、中国> No.148/H13 (M)
      (相談)
      X社は製本印刷機に関する実用新案権(日本)を所有していたが、1999年11月に期間満了により消滅した。その後、中国の会社が同一印刷機を製造し始めた。中国には知的財産権を有しないが、日本及び中国で何か権利行使はできないか。
      (アドバイス)
      • 中国での対策
        中国の反不正当競争防止法5条(不正競争行為)の主張は不可能。
        日本の企業は中国で販売実績がないので、混同が起こる可能性がない。
      • 日本での対策(輸入防止)
        日本の不正競争防止法2条1項1号(周知な商品等表示)の主張は可能。
        長年の間の国内販売実績があって、しかも業界におけるヒット商品のひとつに入るとの事より、周知商品としての主張が可能と思われる。 中国の会社が同一印刷機を日本へ輸出した時に本号に基づき商品の販売を差止める。但し、本号が認められるためには、累積販売数量、金額、周知性の証明等が必要になる。
      (備考)
      日本の税関定率表の改正(2003年4月1日施行)は、水際取締りが特許、実新等に拡大したが、不正競争防止法までは含まれていない。
    3. ③<不正競争防止法、周知商品、日本> No.210/H14 (M)
      (相談)
      X社はベルギーX社の日本総代理店で、10年前からこの会社の商品を国内で販売しており、B(品名)というインテリア建材を販売している。これに対して、最近他社が本件商品群と同じ商品(商品番号も同じ)を通信販売している。この会社の商品カタログは入手したが、実際の商品はない。本件商品に関するベルギー意匠権は存在するが、日本・中国にはない。
      (アドバイス)
      両社の商品を一点ずつ検討して同一及び類似性を判断するために、他社商品をダミーで発注して入手する。次に、不競法2条1項1号にいう、周知の商品等表示に該当するか否かを専門家に検討してもらう。検討の結果、不競法に該当するならば、代理人を付けて相手方に対して警告書を発送する。効果がみえない場合には、差止請求手続をとる。
      ただし、ベルギーの会社との間で、今回の処理に要する費用負担をあらかじめ決めておくこと。